振り付けに、良いも悪いもない。
哲学っぽい命題のように感じられます。
この考えを授業などで出してくれた生徒さんには、「さらに詳しく教えて」と深堀したいところです。
この命題を表す出来事として、例えば、観客があるパフォーマンスを見て、「すごい良い振り付けではないかぁ!」と感動しても、それを踊ったダンサーにとっては、すごく気に入らない振り付けだったり。
ダンサーが、「これ、絶対ウケるに違いない!」と確信を持って踊ったら、観客の拍手が鈍かったり。
当時は「全然良くない!」と思っていた振り付けが、今になって良さが分かったり。
立場によって、また、そのときの気分や価値観によって、良し悪しは変わっていくかと思います。
ここでは立場を、"振付家"に定めてみましょう。
振付家にとって、「悪い振り付け」なんて生み出したくないですよね。
だから「良い振り付け」を目指したい。
前回、踊り出すときには、「良い振り付け」への考えは一旦置いておこう、という話をしましたが、「良い悪いもない」という考えを持つことと同義でありますぜ。
作り始めた振り付けに対して、すぐに良い悪いの烙印は捺さない方が良いです。
なぜって、「悪い振り付け」と思いながら作り進めたとしても、最後の最後の一秒で、「良い振り付け」へと好転することがあるのです。
それが、面白い。
時間芸術ならではの良さです。
振付家冥利に尽きますよ。
ですから、とりあえず動いてみて、暫定の形でも踊り進めることをおすすめします。
作っていく過程で、「振り付けに良い悪いもない」を身を持って実感し、それに伴い、「良い振り付け」への価値観も知らず知らず、変化していくでしょうから。