身体表現のじかん

ダンスは生と共に。

Openform的performance1 〜構想〜

2021年3月27日(土)10:30〜 / 14:30〜(全2回公演)

長岡市美術センターにて、パフォーマンスを行いました。

もう1年前のことですが、当時考えていたことを文字にしておこう。

 

このパフォーマンスで課せられた条件が以下。

・音的条件:無音。

・もの条件:壁面は他作家の平面作品展示。ムービングスペースは家崎萌の立体作品2体展示。

 

実際のパフォーマンス会場の様子

 

パフォーマンスのメイン目的は、家崎の作品とコラボすること。

因みに美術作品展示空間内でのパフォーマンスは、過去に何度か経験があり、本会場でも踊ったことがあった。

また家崎も、大学院の同期として親交が深い。

慣れている条件が多かったが、唯一何気に初めての挑戦だったのが無音環境である。

 

無音の中で踊る。

と言えば舞踏

真っ先に思い浮かんだが、果たしてこの会場において相応しいかは悩んだ。

というのもこの会場の一階は図書館であるため、二階の展示会場へは、何も知らない近隣住民が「ちょっと何かやってるから、ついでに観に行こう」程度に足を運ぶ。

それが良さでもあった。

普段、美術作品に触れない方々が気軽に観に来れるし、運営側も集客にも困らない。

そんなわけで予想されるパフォーマンスの客層は、自ずと悪い言い方をすれば”美術に疎い”方々。

そのような観客に向けて、いきなり無名の女が無音の中で舞踏を繰り広げたら、「時間の無駄だったな〜」と後悔させてしまうのではないかと恐れた。

数少ない、もしかしたら一生に一度となるかもしれない生身の人間によるパフォーマンス。

この貴重な体験を、少しでも「良い時間だった」と思ってもらうために仕掛けなければならない。

 

このことについては、観客に飽きさせないことが効果的手段と考えた。

退屈なパフォーマンス鑑賞体験は、なかなか次また観ようとは思いづらいだろう…

飽きさせない工夫としては以下の方法が挙げられる。

・音の使用

・場面転換

・色彩の豊かさ

・出演者を増やす

・大掛かりな道具の使用…等等

 

これらはエンターテイメント要素を増やすことに繋がっていると思われる。

エンターテイメント要素とは娯楽要素であり、キャッチーさや理解しやすさ、興じやすさ。

そういった要素をきっかけにして、観客にパフォーマンスに興味を持ち続けてもらいたい。

上記に挙げた方法を、なるべく今回の条件に合うように工夫した。

 

まず音。

こちらは先に挙げたように無音が条件ですので、音楽の使用は禁じ手です。

次に出演者。

これは手近なところで家崎萌に依頼しました。

色彩。

正直私は、今までのパフォーマンスであまり色を取り入れてきませんでした。

色にはそれぞれ見た時の印象があって、脳内で意味や個人的感情と結びついてしまう。

故に色ひとつ取っても、具体的なものを想起させる大きな要素となる。

だから安易に用いることができなかったし、私も踊っていると目に入ってくるので影響を受けてしまいます。

逆を言えば、色を取り入れると抽象性が薄くなり、観客にとっては思考のヒントになり得ます。

だから、今回は色を取り入れてみよう。

そこで、色を取り入れたモデルとして参考にしたのが、よしもと芸人の渡辺直美さん。

当時直美は活動拠点をアメリカに移すことで話題になっていましたが、私はその少し前から急激に好きになっていました。

新型コロナ蔓延によって表現者たちは表現の場を失い、露出の機会が急激に減っている現状。

そんな中で、直美はYouTubeInstagramのライブをし、我々一般市民を元気づけていました。

一方同時期に、家崎は家の一区画でできる交換創作の方法を模索しておりました↓

danceliving.hatenablog.com

 

自粛期間中でも、今出来得る表現を見出そうとしている姿。

そんな二人の逞しい姿から溢れるエネルギー。

 

当時の私は、このど田舎でどうやって腐らずにダンサーとして活動ができるのだろうと、絶望しておりました。

都会のWSや公演に参加できない未来が来るとは、予想外のことでした。

今目の前で、腐らずに奮闘している二人の女性からは、かなり勇気づけられました。

だからこそ、色彩を考えたときに真っ先に直美が浮かんだのだと思います。

 

世界で活躍している直美のファッションセンスは洗練されている。

そこに芸人としての、”人を楽しませたい”という根源的な欲求が反映され、直美のファッションは、パッとみて、人を元気にさせるような印象がある。

そういったエンターテイメント要素が、今回色彩に求めているところと合致したのだった。

 

結果。今回の私の衣装は、色彩学で”冷静”を表す青色とは真逆の赤色を選択した。

赤色は”情熱”を表す。

(参考👉【前編】「色彩の芸術家」に近づくための配色理論(基礎知識&色彩心理) | WebNAUT

 

実際のパフォーマンスの様子

また形状は動きに制限がなく、かつ露出の少ないサロペット型にし、近隣住民の目のやり場に困らないように心掛けた。

しかしその下に着る物はグレーのハイネックにし、美術展示会場に流れる静謐な空気感とのバランスを取った。

家崎の衣装も同様、観客の目のやり場に困らない、オーバーサイズの衣装を用意した。

私と同じくらい衣装の色味が強いと、ダンサーとして観客に認識されてしまうと思い、敢えて白を基調としたものを選んだ。

 

この写真に写っている白い物体。

これはよくドレスの下に着る、いわゆるパニエである。

衣装としての役割だけでなく、立体造形物であったり、バタバタと音を発生させるための道具であったりと、何かと遊びがいがある。

これを家崎が用いれば、「踊ろう!」と思わなくても自然と家崎なりの動きが出てくると思った。

また、家崎と私の二人が同じ次元に居るのだと、その繋がりを目に見える形で表現するために、共通で使用する道具とした。

踊る私と、踊らない家崎との、悪い意味での差を埋めたかった心理もあっただろう。

パフォーマンスでパニエを用いる家崎

さて、準備は大体このようなものだ。

では、パフォーマンス前における場面展開構成をどのように考え、実際の全2回のパフォーマンスではどのような結果となったか。

正直なところ、1回目のパフォーマンスではいくつか反省点を得ることができたため、2回目ではかなり内容を変更したのだ。

次回に続く。